吸血鬼、頑張ります。
ひよりは感じていた。
血を吸われ、仰け反る程の快楽と共に身体中から溢れ出した力。
感覚は研ぎ澄まされ、脳内にはいかなる情報も精査され、漏らす事の無い記憶力。
満たされた気持ちと、落ち着いた精神。
心臓は強靭に脈を打ち、ドクドクと体を流れる血液が、くすぐったいほど感じる。
「何なのこれ・・・。確か首を吊った筈なのに・・・」
そんなひよりを鉄観音は見ていた。
「あなたは、吸血鬼として生まれ変わりました」
不意にイブが部屋に入ってきて、そう告げた。
状況を把握できないひより。
「はぁ?何ですかそれ?吸血鬼ってドラキュラみたいな話ですか?」
意味がよく解らない問いを返す。
「ドラキュラ・・・。あれは、創作された我々の姿。血や遺体を愛好して愛でる人間の事です」
「あなたは、この変態に血を吸われた事によって、不死身の肉体を手に入れ、バンパイアとなったのです」
ますます意味が解らないひより。
「何なんですか、さっきから。そんな事在るわけ無いじゃないですか!」
ひよりは得心がいかず、無意味な説明に腹を立てた。
「あなたが何を納得しなかろうが、私は事実を述べているのですよ?まあ、お聞きなさい」
イブは興奮するひよりをなだめて言った。