吸血鬼、頑張ります。
−絶対に人を殺してはいけない−
イブに言われた事をひよりは思い出していた。
「確か、人の血を吸わないと生きられないんだっけ・・・」
異形の体。
桁違いの力。
もう、人ではない自分。
い草が散らばった部屋で、ひよりは考えていた。
人として生きる事と、吸血鬼になって生きる事。
二つを天秤に掛けていた。
消えてしまいたいと自殺を図ったが、本心は死にたくなかった。
言うなれば生まれ変わりたかった。
鉄観音達に出会い、吸血鬼にされた事は、生まれ変わったと言う事ではないのか?
虔属と言う形で、生まれて初めて家族と言うものを理解できた気がする。
今までの家族と言う形は、名ばかりの家族でしかなかったと気付いた。
血族。
ひよりは思いもよらない言葉が頭に浮かんだ。
そう言う事なのか。
家族よりも結び付きが強い「血族」
自分はその一員に成ったのだ。
今まで求めていた強い繋がり。
献身的に誰かの為に尽くせる無償の繋がり。
「もう、迷う事は無いじゃん」
ひよりは呟く。
部屋の戸を開けて、廊下に出る。
向かう先は、中橋エリ達が居る部屋だった。