吸血鬼、頑張ります。
その部屋からは、ひよりに対する中傷が、廊下まで聞こえるほど大きな声で響いていた。
−死んじゃえば良かったのに・・・−
−ギャハハハッ!それ、酷いよ〜!!−
−あいつ、暗くてなんかムカつくんだよね。一緒の班とかマジ有り得ないもん!−
扉の前で、ひよりは同級生達の話を聞いていた。
不意に担任が、ひよりの横を通りすぎる。
ひよりとは目も合わせず、部屋の会話に注意すらせず、足早に立ち去って行った。
「何でだろうね・・・。私、そこまで皆に嫌われる事、したかな・・・」
ひよりの中で、何かがプッツリと切れた音を聞いた。
ひよりは勢いよく、中橋エリ達が居る部屋の扉を蹴り開けた。
ドカン!!
扉を止めた蝶ネジごと、入り口の扉は勢いよく吹っ飛んだ。
「キャア〜っ!!」
中橋エリ達の悲鳴が上がった。
ひよりはツカツカと部屋に入り、中に居る同級生達を睨下した。
「別にみんなの事、私嫌いじゃ無いよ。ホント、何とも思って居ないもの」
ニコヤかなひよりの表情は、同級生達を震撼させた。
今まで見たことの無いひよりの表情を初めて見た驚きと、同級生の足を踏み潰しながらニコヤかに笑う得体の知れない恐怖とが、同級生を震え上がらせた。
ひよりは別段意に介した風でもなく、中橋エリに近付く。
「い、いやぁ〜・・・。こ、来ないで!!」
絞り出すように中橋エリは声を出す。
「ねえ、エリちゃん。
私貴方に何かした?
嫌われるような事した?
死にに行ったんだよ?森の中に。
皆がそう思ってると解ってたから」
中橋エリは涙を流しながらひよりを見詰める・・・。
「う、嘘だから!死ねとか誰も思って無いから・・・」
「私ね、解るの。親にずっと言われてたから。要らないって。
人の気持ちとか、よく分かるんだ」
ひよりは笑顔を崩さずに、中橋エリに詰め寄る。
「でもね、死ねなかったの・・・。ヒモがね、外れちゃった」
同級生の一人が部屋を出て、先生に助けを求めに行く。
もはや、中橋エリは恐怖で声が出ない。
ひよりは中橋エリの首を掴み、高く持ち上げた。
「う、うぐぐぐ・・・」
呻きながら体をバタつかせる。
「苦しいんだよ〜。でもね、すぐに気を失なうから解らなくなっちゃうんだ」
中橋エリの顔色が黒ずんでいく。
「こら!止めないか!!」
騒ぎを聞いた教師達が部屋に駆け付け、ひよりを取り押さえようとする。
しかし、小学四年生とは思えないほどの強い力で、大人の男性教師は手すら振りほどく事が出来ない。
ひよりは中橋エリの首を自分の口に近付けた。
ガブッ・・・。
歯を突き立て、中橋エリの血を吸いだした。
ゴクゴクと、ひよりは喉を鳴らす。