吸血鬼、頑張ります。
真っ青になっていく中橋エリを畳に放り投げ、教師達の腕を捻り上げて壁目掛け叩き付ける。
大人が気を失う程に、背中を壁に強打して倒れる様は、建設機械に振り回されるように子供達の目に写った。
口の端から血を流し、ニコヤかに部屋を出ていくひよりを、同級生達はただ呆然と見ているしかなかった。
中橋エリは瀕死ではあるが、生きていた。
足を潰された生徒は、あまりの激痛で気を失っていた。
口許の血を拭き取り、なす統べなく立ち尽くす担任の前に、ひよりは立った。
担任は女性である。
何が起きたかも分からない顔で、立ち尽くすのみであった。
「先生。あの時中橋さん達を注意してくれたら、こんな事にならなかったんだよ?」
担任を見上げ、変わらずに笑うひよりは告げた。
「でも、別に良いんだ。先生も私の事を邪魔だと思って居たものね」
ひよりは続ける。
「ねえ、先生。私家に帰りたいの。だから送って行ってくれない?
可愛い生徒の最後の頼みを聞いてよ」
担任はひよりの顔も見ずに頷く。
ガタガタと震え、怯えながら。
「良かった〜。先生、ありがとう。だ〜い好き!」
ひよりは亡霊の様な担任と一緒に、駐車場へ歩いていった。
担任の車に乗り、二人は無言のままひよりの家へ向かう。
担任は、緊張とショックから、ひよりの家に到着するなり吐き戻した。
ひよりは、家の前に立って、仰ぐようにそれを見ていた。