吸血鬼、頑張ります。



「だからさ、ひよりちゃんと一緒に沙織ちゃんも学校に行かせられないかなって」


鉄観音はイブに言う。


二人はイブの書斎で話をしていた。



「まあ、学校に通わせるのは良い提案だと思います。
しかし・・・。
色々と問題が生じてしまうのです」


イブは頭を悩ませていた。


「王、順を追って説明しますよ」

イブは話が長くなる旨を鉄観音に伝えて、話し出した。



「まず、沙織さんです。
彼女は言わばゾンビなので、これ以上の知識が蓄えられないと言う事。

尚且つ、痛覚や感覚、人体の機能が停止しているため、身体検査などを受けられません。

体育の授業では、何キロ走っても息切れ一つしないため、軒並み世界記録を更新してしまいます。
非常にアンバランスな子供で、世界中から注目を集めてしまいます」


鉄観音は頷く。


「そして、ひよりさん。
彼女は身体の機能はそのまま人間ですが、血液の温度が極度に低いため、やはり身体検査で問題が生じます。
尚且つ、吸血鬼の身体能力が在るので、ほぼ重力を無視した力で物を動かせます。
それに、定期的な吸血も必要に成ります」


鉄観音は頷く。


「それらが世の中に知られる事になった場合、
混乱と不信で人間の世界は呆気なく崩壊します。
魔導師組合とも全面戦争になり、生命の終末に突入です。
即ち、我々吸血鬼も、結果滅びてしまうのです」



まさにその通りであった。



言わばイレギュラーな存在である吸血鬼は、人に依存して生きている。


その存在が公に成れば、排斥する動きを人間が見せるのは、当然である。


人間の歴史に於いて、忌むべき存在は、常に滅びの末路を辿るのであった。

< 94 / 138 >

この作品をシェア

pagetop