吸血鬼、頑張ります。
「はぁ〜・・・やんなっちゃうな・・・」
鉄観音は溜め息をついた。
アルバイトで食いつなぎ、38歳の現在。
ろくに人とも関わらず、燃えるような恋も知らず、惰性で生きてきたツケを、香織と沙織を復活させた時から急激に回収されている気分だった。
半年も満たない間に、鉄観音の人生は大きく動き出し、変化した。
吸血鬼の王だ何だと、実家に帰ってくればゴスロリのメイド長みたいな
イブに皮肉を言われる始末。
自殺志願の小学生と、弟のあれやこれや。
東洋魔導師組合とか言うおねぇ〜ちゃんの件。
そして今度は自分が教師に成って、学校で授業をするなんて・・・。
鉄観音は、自分のパラメーターで多くを占める(めんどくさい)が、
レッドゾーンに到達したのを感じていた。
だが、今までなら逃げ出してきた様々なめんどくさいも、逃げられなくなっている現状に、
激しい胃痛を覚えるのだった。
「ああ・・・。誰か替わってくれぇ〜!!」
心底叫んだ。
ひよりはだいぶ回復してきた。
初夏。
ひとまず鉄観音は、魔導師組合に提出する書類をまとめて、教師として赴任する旨を伝えなければならなかった。
審理された内容によっては、赴任など出来るわけがない。
まして、学校すら決まっていない上に、小学生と吸血鬼の接触はかなり危険である。
実際のところ、
許可が下りなければ良いなと考えていた。
申請と内容審理の結果は、早くて秋に成るだろう。
「教員免許なんて無いけど、やれるものなんだろうか・・・」
鉄観音に素朴な疑問が浮かんでいた。