私の記憶へ、ようこそ
part2 -2.5-

はやく、家に帰りたい。
はやく、はやく。

この気味の悪い学校から抜け出したい。

唯桜は運動神経抜群のその足で廊下を走っていた。

とにかくはやく。
家に帰るために。

でぐち
やっと学校の玄関についたとき、

???「はあっ、あっ、あのっ!!今村、さんっ」

自分を呼び止める声がして唯桜は振り向いた。

唯桜「あ…えと…」

自分を呼び止めたのは転校生の西島鞠だった。


すごく可愛いから目立つ、人。
だが自分から目立つことを避けているようだった。
けど周囲の目は確実に彼女をとらえていた。
とにかく
可愛いから。
だから彼女は何をしても目立つのだ。


自分には関わることのない人。

そう決めつけていたから、呼び止められた時にはびっくりした。

西島 鞠「あっ、あの、ね…えと…はぁはぁ」

びくびくしながら話す彼女はたしかに可愛かった。言葉を発するたびに髪がふわふわ揺れて
唯桜(あざといなー)
なんて。
けど女の唯桜ですら守ってやりたくなった。

唯桜を追いかけて走ってきたのだろうか。
呼吸を整えている。

西島 鞠「いっ、今村さんっ、あの、わたし、今村さんに伝えないといけないことがあるの…とても…大事なこと…」

大事なこと…聞いた方がいいのか…
けど私は帰りたい。
ここに長くいると気持ち悪くなる。
吐きそうだ。
お願いだから帰らせて…

唯桜「え…?なに…?私急いでるんだけど…」
西島 鞠「あっ!!ダメっ!大事な…ことだから!」


そんなに大事なこと…?


大事なことが何なのか。
不思議と気にならないのだ。


まるで運命に逆らうなと言われてるみたいに足が動く。

家の方向へ。

玄関の出口まであと数㍍。




あと2㍍。







1㍍。














グシャ。


目の前にトラックが。
今まで無かったはずのもの。

唯桜「え…?」

唯桜はがたんっと腰が抜けたようにその場に座り込んだ。

目の前で悲鳴が聞こえる…
何が、何があったの?
唯桜は力なく視線を下に落とした。

唯桜「あ…うわああああああ!」


そこでみた光景は
まるで世界が終わったかのような光景だった。

引かれる生徒たち。
駆けつけてくる先生たち。

唯桜「ひっ…」

思わず後ずさりする。

頭がぺちゃんこになってる生徒。
足がちぎれている生徒。
大量出血している生徒。
口から血を吐いている生徒。
ばらばらになっている生徒。


その中に美羽、美虹もいる…

唯桜「みっ、美羽ちゃ…えっ、美虹ちゃん…?なっ、なんで…あの…え…あ…いや…いや!いや!」

すべてが見えているのに
見えていない。

これをパニック状態というのだろうか。


???「も~!!どうなることかと思ったけど…よかったね♡助かって」


消えゆく意識の中、後ろでそんな声がした。





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