その瞳をわたしに向けて

「お気の毒です」

だからさっさと行ってしまえばいいのだ。私には関係ない。

松田に背を向けてエレベーターがくるのをを待つ

辺りに誰もいないそのスペースで、後ろの松田が身体を屈め書類を盾にして、美月の耳元に口を寄せた

「鈴政のママが新作の茶碗蒸し、お前に食べさせたいから連れてこいって言われてるんだが、行くか?」

「えっ!行くっ………あ」

直ぐに松田の方に顔を向けた。松田の口角がクッと上がった。そのままの体勢で


「じゃあ後一時間くらいで終わるから、地下駐車場の車ん所にな」

そう伝えると、書類を手渡され、スッと近かった顔が美月から離れた

「じゃっ、その書類よろしくな」

そう言ってエレベーターには乗らず、ホールから別の方向へ足を向けて行ってしまった

「……………」


お腹すいてたし…………
いいのかなぁ、ホイホイ車、乗っちゃいけないんじゃなかったっけ?

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