その瞳をわたしに向けて
「ねぇ、美月ちゃん達って、本当に付き合ってないの?」
毎度、毎度美鈴が美月に尋ねる
早くも『鈴政』で松田と一緒に晩御飯を食べるようになって一か月になる
週二日か三日、松田の仕事の都合に会わせて会社から、松田の車に乗り込む事もあれば、美月が一旦自宅マンションに帰ったあと、松田の車に拾ってもらうこともあったり
「いちいち耳打ちするのは面倒だから、携帯教えろ」
そう言われて番号の交換もした。
「付き合ってないです。何度も言ってるじゃないですか」
「だって二人で来ることのが多くなったじゃない。私には隠して、もう一緒に住んでるんじゃない?」
「……………有り得ないですよ」
そんな美鈴とのトークが始まるのは決まって松田が煙草を吸いに行っている時だ
本当に松田にとっては美月のマンションへの往復は大変なはず、お酒も飲めないし
何とか割り勘にするようにはなったものの、時々先に払ってしまっているときもある。
あれから恋愛関係になるような色っぽい会話や行動もなく、会社でも相変わらずミスを怒られる事もしばしば………
二人でいてもいたって普通に会話して、緊張もなくなってきた