その瞳をわたしに向けて
もちろん会社では、二人で『鈴政』に通っているって事は誰も知らない。ましては私達が仲良く(?)会話していることですら知らないはずだ
「お前って嫌いなものとかないのか?」
鈴政での美月の食欲に感心する
「基本的にないです。野菜、お肉、魚なんでも食べられますよ。小さい頃から残すことは出来ませんでしたから、お祖父様とか厳しくて…………母は専業主婦でしたし、基本和食中心でしたから」
「ふぅん」
なんだ、と面白くなさそうに自分の定食に箸をすすめる
「松田さんは何かあるんですか?嫌いなもの」
「……………」
まるで話を無視するように反応しない松田
「剛平君は、キュウリが食べられないわよね。」
そんな二人の会話に美鈴がクスクスと笑いながら口を挟む
「…………キュウリ食べられないんですか?ぷっ、結構ベタなんですね。」
「そうなのっ、後はねぇ……おからとか高野豆腐とかもダメなんだってぇ」
「エエエッ!有り得な~い、美味しいのにぃ~」
巨人兵でも苦手なものがあったんだ……ぷぷっ
食べなくたって死にゃしないだろっと、これまたベタな答えを返してくる松田を二人でクスクスと笑う
「美月ちゃんはいい奥さんになりそうね。」
にこにことそう言う美鈴に、今度は松田がぶっと吹き出す
「いい奥さんって、食べてばっかで弁当なんか作ってきた事ないだろ」
「………別にそんなのやらないだけで出来ない訳じゃないもん。それに作らなくても美味しいものたくさんあるし………」