その瞳をわたしに向けて

「清宮っ」

エレベーターを止めて待っている松田に強く呼ばれ、あわててそこに乗り込んだ



結局、不機嫌な松田に車に乗るように言われて、家の方向を伝えた

車が発進してからも気まずい雰囲気の沈黙が続き、そのまま口なんか開かずにいればよかった


でも、この沈黙が堪えられないのと、もやもやとした苛立ちの気分がいけなかった……


「立花さんと杉村常務って、付き合ってたんですね……」


助手席で肩を屈めてそう言ったが、松田からの返事はない


何を覗き見たのか分かってしまうのに……


「立花さんって、普段いい人っぽいのに……ちゃっかりしてるんですね。愛想がいいのは杉村常務のためだったんだぁ……」


「…………」


「仕事も残業とか頑張ってますアピールして、何でも頼むと引き受けちゃって……あれって、計算でやってたんなら相当腹黒ですね」


「お前なぁ……」


運転しながら不機嫌がMAXになっていく松田には、気が付かなかった
< 15 / 432 >

この作品をシェア

pagetop