その瞳をわたしに向けて
さすが田中さん、決して近くないその席から分かるんだ、部署と名前まで。
でも、そう言われれば彼女は見たことがある。時々経理に関する書類を、わざわざ2課まで出向いて持ってきてくれる人だ。
仕事熱心な人だと思えば、積極的なのは松田の前だけだったりする訳で、そういえば山崎主任に関する書類はいつも、内線で呼び出しをかけられてるっけ…………
「松田君、最近よく飲みに行ってたり、合コンにも何度か誘われてるみたいね。残業もしてるのに大変ね。そうゆうのなんて言ったっけ? リア充?」
ランチのパスタもほぼ食べ終えて、食後のコーヒーを飲みながら楽しそうに彼らを監視している。
夏場に、飲みに行く機会が多くなるのは当たり前で、まして営業だし、自然に打ち合わせの流れでそうなると松田は言っていたが、合コンの話は知らない。
『鈴政』に行く周期が少なくなっているのは、仕事のせいだけではないと言う訳だ。
へぇ………