その瞳をわたしに向けて
「だって………見ちゃったし、二人が抱き合っているとこ」
ムウッとして、もう自分の苛立つ気分しか考えてなかったから、そんな事を吐き捨てる様に言ってしまった
「残業中に何やってんだろ……いやらしい」
「………」
急に車が路肩に停まる
「お前、降りろ」
いつにも増して怒りの籠った松田が、ハンドルに顔を埋めている
「えっ………?」
「自分の言ってる事分かってんのか?少なくとも立花はお前の先輩だろっ、いやらしいとか……じゃあお前は何なんだよ」
うつ伏せながら斜めからじっと美月を睨む眼鏡の下の切れ長な目に、一瞬ドキッとさせられた
「先輩にいつも仕事を押し付けて、ヒラヒラした服着て合コン行ってるお前は偉いのか?
言ってる事がいちいちムカツクんだよっ!」
「………」
「お前に立花の何が分かる……足ばっかり引っ張りやがって、お前みたいな人種の奴らは自分しか認めてないんだろうな」
はぁっ……と大きな溜め息をつく松田