その瞳をわたしに向けて

清宮が誰かと見合いして結婚かぁ…………

それが現実なんだろうな、実際


清宮とよく話すようになったのは、ここ最近だからなぁ、知らないことの方が多いだろう

立花のことであいつの所に押し掛けた時、慰められた後、なぜか泣きだしたのは、俺の知らない何かを思い出させたからだろう。


今の友達からの電話だって知らない名前だった。


会社じゃあ知ってる範囲内で動いているのにな………

パソコンが不得意で書類への理解力がない

お茶やコーヒーを入れるのは上手い。
それに、やっぱりお嬢様だからか、客の扱いが上手いが…………

いろんな噂があるせいか、他の部署との女子社員と交流がもてなくても平気な顔をしている。

あれは少し痩せ我慢だろう。最近理解してきた。


二回目に清宮の部屋に泊まった朝、会社に行くため寝ているあいつを起こしたっけな

ボサボサの髪の毛に、泣いて腫れた素っぴんの顔に気づかず「いってらっしゃい」とほぼ寝ぼけ眼で手を振られ、思わず頬が緩んだ

あの後、ちゃんと鍵を締めただろうか………

あれでも清宮財閥のお嬢様なんだからなぁ

そんなことを思い出して、クックッと笑いをこらえている松田を不思議そうに見る美鈴と目があった。

透かさず視線を逸らして店の出入り口の方を見た

  
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