その瞳をわたしに向けて

片手に持ったビールに視線を向けながら、頬杖をつく俺をカウンター越しに美鈴ママが見下げてきた

「なぁに………?帰りの車の中で喧嘩でもしたの?」


「……………いえ、良く分かんないんですよね、急に怒りだしたり…………そうかと思えば取り繕ったように笑ったり、何考えてるのか…………」



はぁっ、とそのまま溜め息をつく



「そんなの当たり前じゃない。夫婦でも親子や兄弟だって、何でも分かる訳じゃないから喧嘩するんでしょ。恋人だってね」


……………確かに


「そんなだったら、ちゃんと付き合ったらいいじゃない?」

俺の顔を覗き込む美鈴ママが、意味ありげに含み笑いをする


「あ……………まあ、何て言うか、俺一度清宮に振られてるんですよ。」


「へっ、そうなの…………?」

予想外だったのか、少し驚いた美鈴ママから視線を外し頭を掻いた
< 177 / 432 >

この作品をシェア

pagetop