その瞳をわたしに向けて
選ばれた彼女
「美月ちゃん、松田君と何かあった?」
給湯室で常務室へのコーヒーを入れながら立花が話し掛けてきた
「いえ、別に……どうしてですか?」
「あっいや、ほら……なんか最近松田君も美月ちゃんも静かだから」
お客さん用のお菓子をお皿に並べる美月の斜め上から10㎝ほど背の高い立花が手を止める
「松田君、美月ちゃんに絡まなくなってなんか寂しいなって」
立花がフフッと笑いながらそう言う
「……それってどういう意味ですか?」
美月はムッとした顔で立花を見上げる
………だいたい誰のせいで靴擦れしたと思ってるんだこの人は
「私が毎日、松田さんに何か言われてなきゃダメなんですか?」
美月が不機嫌さを最大限に見せると立花は、「いやいやごめんなさい、そう言う訳じゃないから」っと謝りながらコーヒーとお菓子を一緒にトレーに乗せた
「コーヒー、私が持って行きます。常務室ですよね」
「えっ?あっそうだけど………」
コーヒーを頼まれたのは立花だけど、美月はそれを自分が持っていくつもりで手伝いに給湯室へ来たのだ
「立花さんは、仕事や会議でも杉村常務と何かと関わる事多いじゃないですか。私は、お茶出しくらいしか接触がないんですから…………ズルいです」
「美月ちゃん………杉村常務のこと、好きなの?」
「…………はいっ当たり前じゃないですか。だから常務室のお茶出しは私が持って行きます」
明らかに立花に対しての牽制だった。
付き合っているのは分かっていても、ノーテンキなこの人に言ってやりたい気分だった
「そっかぁ………じゃあお願いね」
少し引いた笑顔見せて立花は給湯室から出ていった
出て行く瞬間、ほんの少し立花からフルーティーなの匂いがした
香水………?