その瞳をわたしに向けて

「お前に頼んだ作成書類はまるで赤点の答案用紙だな……」

昨日作成した資料に赤チェックを入れて返してきた


「もちろん今日中」




大手飲食店チェーン企業イズミfoods

都内食品開発部門 第2営業部
そこで営業事務をしている入社二年目
清宮美月(きよみやみつき)23歳



「………今日中って、無理ですよ、定時に終わらないじゃないですか。昼から会議の準備も入ってますから」


面倒臭そうに返事をすると、冷たい目がさらに睨みを帯びて低音の声と共に落ちてくる


「仕事が遅いお前が悪い。定時までとは言ってない、今日中だ今日中」

そう言って書類を突き付けてきた

赤チェック入れる暇があるなら自分で直せばいいのに……
美月は突き付けられた書類を見ながら口を尖らす


「雑用に時間をかけるなら、書類のチェックに時間をかけろ。それと、この間頼んだ今日の会議資料は当然出来てるよなぁ、あれは昨日までのはずだったが………」


「あっ、それはここに出来てます。はいっ松田さん」


急いで席に戻ると、今日の日付と会議の議題が付箋に書かれた資料を手渡した


「…………」


その資料をじっと見ると、ペラペラと捲りながら小さく溜め息をついた

細目の黒ぶち眼鏡がまるで中学校の先生のように、何もかも見透かしていた

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