その瞳をわたしに向けて
常務室に入るとそこにいたお客様は………


イズミfoods代表取締り役
泉直孝社長の御子息  泉道孝(いずみみちたか)専務だった


本社の会社一族で役員幹部、杉村常務の従兄弟にあたる

いずれは社長候補である


「あれっ………春香さんではないんだ?」

泉専務は、コーヒーを持ってきた美月を見て不思議そうに言った


春香さん?


「清宮さん、立花さんは?」


杉村常務が美月に尋ねた

「えっ、あの……います。忙しそうだったから代わったんですが、呼んで来ますか?」


なんだ………始めから立花さん指名だったんだ

コーヒーを専務の座る応接セットのテーブルに出しお菓子を添える

その様子をじっと見つめる泉専務が、ふぃに口を開いた


「清宮って…………この子があの清宮さん?」


自席の椅子から移動した杉村常務に向かって、泉専務がそう言う


「?」


美月が専務の言うことに手を止めると、小声で「ああっ……」っと目を伏せながら言った杉村常務に泉専務はもう一度美月を見直した


「悪いね、立花さんを呼んでもらえるかな、清宮さん」

専務が何かを言い出すのを遮るように、杉村常務が美月にそう頼んだ。

いつもの柔らかい笑顔だ

「はいっ分かりました」


………いつもの笑顔だったのに、まるで追い出されたみたい


「若いな………」

泉専務が退室する美月を見ながら呟くように言った

その後、専務が常務に話を切り出す声が耳に入ってきた

「………レセプションパーティーは春香さんなんだろ。もう話はしたのか?」


「いや……これから………」


扉を閉めてしまえば話の続きは聞こえない


なんだ……立花さんって案外もう一族お墨付きなのか…………?


常務のとこに格上の専務が来るって、いくら年の近い従兄弟だからって普通違うんじゃない?





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