その瞳をわたしに向けて
「それより、お父様が心配だからうちの病院で全身健康診断をって…………」

もう一人、鷲見総合病院長の次男で普通に医者をやっている。次期院長はすでに長男と決まっていて、本人は結構気楽な身だといっていた。

それにしては、うちの病院、うちの病院って豪語してるんだけど…………

あともう一人は…………ああ、面倒臭い。


「そうですね、また機会がありましたら父と相談しま……………あっ!!」


「「?」」



何気に松田たちの席を見ると、松田だけ立ち上がって帰ってしまう様子だ。

「あのっ、私お化粧直してきますっ」

そう断り、急いでその場を後にした。




「松田さんっ」


フロアーを出たところで既に出入り口の扉に向かう長身の背中を見つけた

「もう、帰っちゃうんですか?!」

ゆっくりと振り向いて、少し驚いた顔をして立ち止まった。


「…………ああ、悪いな、お前に一言いって帰るべきだったな。俺、会社に戻るから」

「えっ、お仕事なんですか?」

走ってきて、少し息が切れていたのを落ち着つかせて、松田を見上げた


「………………」


「………なんですか?」


答えが返ってこないまま、黙って見下ろしてくる松田

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