その瞳をわたしに向けて
「それは……………」



「美月」

美月の後方で呼ばれた声にビクンッと肩を屈める

声がした方を向くと、そこに予想通りの人物がいた

「ここで何をしてるんだ?知り合いか?」

つかつかと近づいてくる


「……………兄さん」

美月の言葉に「えっ」と小さい声をあげて視線を向けると
近づいた『兄』は、なぜか松田を睨み付けてきた

「失礼よ。松田さんは私の会社の人です」

「…………会社の?」

『兄』が眉をひそめると、松田は軽く一礼した

「それは失礼しました。今名刺を…………」

「いえ、もう失礼しますので、また機会がありましたらその時に…………」

そう言って右手をあげる

「もうお帰りですか?」

「はい、まだ気掛かりな仕事が残っていますので、先程まで楽しませて頂きました」


では失礼しますと、もう一度一礼した後美月にも目配せして背を向けた。

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