その瞳をわたしに向けて

重厚な扉が締まりきるまで美月はそれを見つめていた


「いつまで、そうしてるつもりだ美月」


「……………」


美月は、身体の向きを変えて兄の清宮保(キヨミヤタモツ)を見据えた

「さっきのやつが、この前聞いたオヤジが勝手に決めた美月の縁談相手だった奴か?」

フロアーに向かいながら粗か様に聞いてきた。


「違うわ、松田さんはただの先輩です」

「ふうん」


一緒にフロアー内に入る前に美月が足を止めた


「兄さんが来たなら私、瑠璃ちゃんの所へいってていい? もう充分お客様相手しましたから」


保が美月を見下げ、顔を歪ませた

「あいつ…………来てるのか?」

「来てるわ、私だけじゃ心許ないもの」


「……………」



そうして、保がフロアーに顔を出した



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