その瞳をわたしに向けて
パーティーと立花の意味が分かったのは、それから二週間程だった


「パーティーにパートナーが同伴なのは分かりますけど……それがどうして立花さんなんですか?」


不満たっぷりで美月が、アルバイト女性の田中さんに訴える


恋人なのは分かるけど、会社の新商品に関するレセプションパーティーで仕事の一貫なのに、こんなに大っぴらに一族中の杉村常務の隣を一社員の立花さんがいていいのか?



婚約者なみじゃん………立花さん


気が付いたのは、この部署で二人の付き合いを知らなかったのは、私だけだったみたいだ


「立花ちゃん社会人6年目だし、細見の長身だからドレスも良く映えると思うわぁ。杉村常務のパートナーとして、釣り合いがとれるのよきっと………」


田中さんがそう言って苦し紛れに美月をなだめる

そんな二人の会話をははっと苦笑いする立花



「綺麗にドレスアップしなきゃいけないのに、なんで休みとって美容院くらい行かないんですかぁ………?」


当日、三人がいるのは、会社の常務室近くの女子トイレにあるパウダールーム。
美月がいつも使う場所だ


パーティーは夕方からで、立花は午前中普通に仕事していて、ドレスを持ってきて今、ここで着替えるというのだ


着替えの手伝いのためいる美月は、立花の身支度のようすを見て呆れる


「立花さん………ホームパーティーじゃないんですよ、ただドレス着てけばいいとか思ってませんよねぇ………」



ドレスは深い藍色で、色白細身の立花にピッタリの衣装だ

背中は肩から腰にかけ同色の総レースで、前は胸の上から鎖骨まで同じレースになっていて、胸のない立花だが上品さが際立つ

膝下10㎝のところでフレアになったエレガントなドレスだった


………ただその立花にピッタリのドレスに対しての化粧、ヘアメイク、装飾品等に美月は気に入らない


簡単すぎる……数十分のメイク直しなんてあり得ない!!

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