その瞳をわたしに向けて
最後の仕上げに手のマッサージして………ってなんでこんなに荒れてるの?

「立花さん、荒れてますね……クリーム多めに塗っておきますよ。私の付け爪貸しますけど、なくさないで下さいね。結構このピンク、気に入ってるんですから。」


そう言って丁寧にシンプルで上品な爪で立花の指を飾る


「わっ……こんなの初めて、かわいい。」



この人は、本当に杉村常務と付き合ってるんだろうか?

大企業の会社社長の甥っ子で役員幹部の一員の恋人なのに、化粧っ気も飾り気もないなんて……


立花のそんな様子に不安を感じる美月


「立花さん、パーティーでは杉村常務の側を出来るだけ離れないようにして下さい。パートナーなんですから。
………それと、女性は隣で微笑みながら頷くだけでいいですから、むりに会話に入ったりしなくていいですから。
後ですねぇ………食べ物は一口で食べられるものだけにして下さい。飲み物もガブガブ飲まないで下さい。それに、間違っても他人に食事を取り分け配る様な気遣いをしてはダメですよ。」


淡々と諭す様に立花に言い聞かす


「わっ……分かった」

どっちが年上なんだか、完全に美月の言う事を関心するように素直に聞く立花


本当にこの人が行っていいんだろうか………



「立花ちゃーん、常務が時間だからって呼んでるよ………ってえええっ!!」

用意のためなかなかトイレから出て来ない立花たちを、杉村常務に頼まれて田中さんが呼びにきた


「綺麗……立花ちゃんビックリしちゃう」


バタバタと立花と美月がしたくを完了させて常務のもとへ急いだ


「………!!」

立花の姿に目を丸くする杉村常務


「驚いたなぁ………」


営業部の自分の机にパーティー用の鞄を取りに行くと、そこにいる誰もが仕事の手を止めて、立花の姿に捕らわれてしまった


「さすが、これは美人が際立つなぁ立花さん。」

注目されて恥ずかしがる立花


「美月ちゃんがメイクしてくれたお陰なんです、私じゃこんなにしっかり出来ないですから……」

何人かに囲まれる立花の後ろに、美月は一緒に着いて入った



松田も立花を見ていた。パソコン作業をしていたその手は止まったままだ


その視線を見ている美月には気付かない様子だった

「立花さん、時間ないですよ早くっ」

「あっはい、美月ちゃんありがとう」


行ってきますっと皆に挨拶をして扉の前で待つ杉村常務のところへ急いだ

松田の視線は一旦逸れたものの、出ていった二人の扉を暫く眺めていた



気持ち………駄々漏れてるじゃん、松田さん
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