その瞳をわたしに向けて




部屋を出る時くらい声を掛けて出てくれば良かったかもしれない………


寝息をたてて眠る美月がいとおしくて起こして家に帰したくなかった

そのままここにいてくれれば仕事から帰っても一緒にいられる………

そう思い、起こさずに出てきた




会社に着いたものの、置いてきたメモだけでは心もとない

煙草を吸いにいくふりをしてこそこそと何階か下に降って行き、非常階段へ出て電話をかけた

「仕事、6時半には帰れると思う……なるべく早く帰るから、待ってて……」

話ながら自分の頬が綻んでいるのか分かる

電話をしながらふと扉に目を向けると、そこにニヤニヤと笑う一条の姿があった

「……ってわっ!」


『えっ……どうしたの?』


「あっ……いや、何でもないもう仕事にもどるから、じゃあ……」

一条を睨み付ける松田


『あっ』


「んっ?」


『ううんっ……お仕事頑張って』

ヤバい………すげぇ帰りたい………

「ああっ……」

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