その瞳をわたしに向けて

「………この前は、小細工しないで精々堂々とやれって言ったじゃないですか………」

この前とは、一条が資料を探す名目で美月を倉庫に連れ込もうとしたら、松田に見つかって近くの会議室で説教された時
に松田が言った言葉だ。


「………まあ、あの時はまだなぁ……」


なんたって今朝付き合い始めたんだから……

いまいち理解してないのか、したくないのか不貞腐れた態度で俯く一条


「何やってるの?」

声をかけられたほうを見ると、立花が階段を降りて来ていた
二人のあやしい状態に眉をひそめていた


「一条君が松田君追いかけて行ってなかなか帰って来ないから、煙草かと思ったのに………打合せ資料は、二人がいないと変更か所が分からないじゃない……」


立花が近づいてくると、松田は一条の耳元に顔を近づけ

「言い触らすなよ………」


そう言って肩を叩いて立花の方へ向き直した

「なに?」

こそこそととした二人の態度により一層疑問の念を示す立花


「何でもない、悪かったすぐに行く」

そう言って立花を通り過ぎて部署に戻る階段を上がる

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