その瞳をわたしに向けて
幸せの条件
*
「1 、2 、3……5…あっ、ない……もぅなんでいつも揃ってないの?!」
第二営業部内にある資料室
使ったファイル3冊置きに来たまま、いつの間にか揃ってない周辺の棚の片付けを始めた美月
「せめて会社別か年代別に分けて返そうとか思わないのかなぁ………ったく」
ぶつくさと不満を漏らしながら揃わない4番のファイルを探す
棚の上に目をやると立て掛けてなく、山積みされてあるいくつかの束のなかにそれを見つけた
つま先立ちに精一杯手を伸ばして取ろうとすれば、今にも他のファイルまで落ちてきそうだったけど
「………もう……すっ……こし………あっ」
「これ?」
もうちょっとでファイルに届きそうだったのに、そこにあった重なったファイルを後ろから別の手が、軽々と持ち上げて奪っていった
振り向けば、遥か上に顔のある影、いつもの煙草香りのするスーツ
「………松田さん、ありがと」
「って言うか、脚立あるだろ」
お目当ての4のファイルを持ったまま近くにある脚立の方へ視線を向ける
「届きそうだったから……」