その瞳をわたしに向けて
「目的?」

松田が首を傾げる

「そもそもあの人は、清宮の会社を継いで社長になるつもりはなかったらしいのよねぇ………
前に酔った時、聞いたことがあるんだけど」

「酒?弱いのか?」

「美月ほどじゃないけどかなりね、ふふっ家系よね。」


心なしか、幾分楽しそうに瑠璃子は思い出したことを語りだした



清宮保が中学の時
彼は彼なりに自分は、なりたいものがあってそれを素直に父親に伝えたところ父の答えは

『君の人生なんだから決められてはいないよ。なりたいものがあるなら、頑張りなさい。』


そう言ってくれた父に、でもそれでは会社は?と聞いたらしい

父に兄弟は無く、祖父から受け継いだ清宮の会社を継ぐのは必然的に保になるはず


少し考えた父は


『それでは、美月の旦那様に継いで貰おうか。彼女が好きになった相手に社長になって貰えばいい』


そう言われて、決して政略結婚なんかさせないで、あくまでも彼女が結婚したい相手にと父と約束した。



「その時は彼も納得して、心置き無く自分のなりたいもののために勉学に励んでいたらしいわ。」


< 311 / 432 >

この作品をシェア

pagetop