その瞳をわたしに向けて

松田のYシャツの腕を掴んで見上げる


「大阪出張の時に会ったんだ。仕事の話だ、それだけだ」

「でも…………」

不安そうに見上げる美月の頭をくちゃくちゃと掻き回す


「心配するな、疑われたのは一瞬だし、会社にも影響がなかったのは全部お前の兄さんのおかげなんだから」

そう言ってソファーから立ち上がりコンビニ袋を持ってそれを冷蔵庫に入れた


「でも………うちの部署や剛平が不正に気づいて動き回っていたこと、本社の取り引き先に話したのはたぶん兄さんなんだよ」


「たぶんな、でもそれにしたって不正に気がついたのは兄さんの方なんだから………」


ようは言い方だよな………………

報道で大々的に問題になった川村冷蔵に関わってない事を『もしかして隠ぺいの可能性、無いわけじゃないですよね』なんて、

世間話にしても清宮コンツェルの外食店部門総営業部長に言われれば警戒するのも仕方無い。食品を扱う会社ってのはひたすら信用が第一だもんなぁ。

そして、後に引くのもこうゆう問題だ


「だからって、お前がやめなくてもよかっただろ……………」


「だって…………その時は…………」

会社がその一週間、実家に帰っていた美月をかえって疑うことになるとは………

咄嗟にやめる方向にもっていかれたようなもんだ。

こいつはこいつなりに俺も清宮保も疑われたく無かったんだろう。

< 316 / 432 >

この作品をシェア

pagetop