その瞳をわたしに向けて
「しっかり手綱引いとけよ。常務のお見合い話があるたびに、酒飲んで暴れてたんだから。」


「どうしてこんな時に、そう言う事言うかなぁもうっ!」

けらけらと止まない笑い声が、春香と松田を中心に部屋中に響く。


「これくらい言わせろよ。俺だって常務の隙をついてやろうと思ってた時があったんだから」


「はぁっ?!何言ってるのよっ」


「ははははっ」


まあ…………冗談としてしか捉えられないか。

自分でもこんな風に彼女の前に真っ直ぐ立てる事が嬉しかった。

それもあいつが居たからか……………


『そのお腹の中にいる立花さん、解放してあげて下さい。 閉じ込めっぱなしじゃないですか………』





……………今日、どこかでここに美月がいるんじゃないかと期待していたが、やはり姿は見当たらない。


二人に、それなりに影響を与えた本人なんだから呼ばれていると思ったんだが…………


 カシャッ


「?」

新婦である春香が、松田をスマホのカメラで前触れもなく写した。

< 323 / 432 >

この作品をシェア

pagetop