その瞳をわたしに向けて

ーー半年ちょっと前ーー


杉村常務に辞表を出した。


『会社を辞める必要はないよ』と止められたが、やっぱり私のなかではここにいる必要がないように思えた。

入社して一年半経っても、仕事に興味も進歩もなかったし。

それどころか清宮の名前が、かえって迷惑をかけることになっている………………





「なんだ藪から棒に………………」

実家に帰った保の後ろから部屋について入った美月が扉を閉めた


「だから、兄さんでしょ。うちの会社が全く不正に関わってないなんて解らないって言ったの。
それとも兄さんがダイレクトに取り引きを縮小するような指示をしたんじゃないの?」

言いたいことを息もつかずに訴える美月に、保は聞く耳持たずに着替えをしながら溜め息をついた


「……………言いたいことはそれだけか?誰にそこまで知恵をつけられたのかは知らんが。」


息巻いて立つ美月を、保は着替えを終えて部屋にあるソファーに深く座りその顔を見上げる


「俺がお前の彼氏に渡した資料や報告書がなかったらイズミfoodも世間の矢面に立ってたんだぞ」


「…………剛平に会ったの?」


「あの男が動いていたのは、あの男自身の仕事をしていただけだ。
それに、俺だって不正のことは話題にする、食品は扱ってるからな。
別に具体的な名前も出した覚えはないし、先方が勝手に解釈しただけだ。」


保がゆっくりと立ち上がって、美月の頭を撫でる


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