その瞳をわたしに向けて
「そんなの兄さんの言い訳じゃない、剛平は何も悪い事してないのに………」

頭を撫でられながら、自分では口で敵わない保を見上げる

「会社のいち社員だからな。上から指示をされればそう動くしかないだろ。それが例え辺鄙な場所への移動でも」


「……………それって、剛平が飛ばされるってこと?やっぱり兄さんがそう仕向けたんじゃない!」


「…………また、訳の分からない事を」

目の前で大きく息を吐く

「私ばっかり好き勝手にやってるのが面白くないんでしょ…………だからそうやって私の嫌がる事するんだ」

「美月…………」

目を逸らし、自分がそう言えば保が困って何も言わなくなる事が分かっていた

でも、今回は違った。
保はそんな美月の頭に手を置いたまま、俯いた顔を覗き込んだ

「何も分かってないのはお前だろ美月、あの男と付き合ってお前に何のメリットがあるんだ?」


「メリットって…………そんな」

「だいたい、あっちは今回の事で忙し過ぎてお前に構う暇さえなかっただろ。危うく襲われかけたりして…………」

「助けに来てくれた」

「それにしたってその前にずっと実家に帰って車で送り迎えしてたから、それだけで済んだんだろ。」


「…………………」


なにを言っても言い返される

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