その瞳をわたしに向けて
「必要無いだろ美月、会社辞めたんだから。明日には荷物も片付く、だいたいあの会社に元々お前の居る意味はなかったんだからこうなるのが遅かったくらいだ」


どうして兄さんはそうやって自分が正しいと思う方向へ物事を進めていくんだろう。


「何で………兄さんは私の居場所を勝手に取り上げていくの?」


「中途半端な場所ならつくるな。あの男のところだってお前が一緒にいればその内二人とも破滅するぞ」


「それは、兄さんがそうさせるって事……?」


「そう思うなら、そう思っても構わない。それが嫌なら別れろ。だいたいお前は、今何もないだろ」


「………………」


俯いて立ち尽くす美月の前で保か盛大な溜め息をつく

「なんの取り柄もないお前が、結婚できる相手はせいぜい資産のある男だけだ。世間知らずのお嬢様に社会の役割はない。」




顔を上げた美月がキッと保を睨みつける




「…………わかった。もう兄さんとは一生口きかない。」



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