その瞳をわたしに向けて
会いたくても会えない
「智也くん、写真で見てたより随分大きくなったね。ふふっ常務そっくり。」
杉村常務と春香さんの1歳になった子供を見て、綻ぶ美月
「美月ちゃん、もう引っ越しの荷物は片付いた?」
杉村家におじゃまして、春香が紅茶の用意をしてくれている間、息子の智也君を抱っこしてあやす美月にそう聞いてきた春香。
「はい、片付けは得意なの。まだ簡単なものしか揃ってないんですけど。」
「仕事は慣れた? 忙しい? はい、どうぞ」
彼女お得意の手作りのパンケーキと一緒に紅茶が出されて、人見知りして美月の膝でムズムスする智也君を春香さんにバトンタッチさせた。
会社を辞めて、3年ちょっと
名古屋で専門の学校に通い就職活動をしながら都内に戻った
晴れてスタイリストに関する事務所に就職がきまって3ヶ月
また一人暮らしをするため、1週間前に引っ越しをした。
「まだ、ただの雑用係ですよ。とにかく体力勝負って感じ」
ははっと出された紅茶を啜る
「でも、話し聞いてると何だか楽しそうね。昔と違って生き生きしてる美月ちゃん。」