その瞳をわたしに向けて
「…………………えっ?」
「あいつはまだロサンゼルスにいるのに、本社やうちの支店でも、この話持ちきりでねぇ、
相手はBest Company(ベスト カンパニー)って会社の田沼社長の娘さんで、確か社長のロス視察に彼女も同行して来たのがキッカケらしいよ。」
淡々とその話を始めた杉村常務
「あっでも、その日の接待相手の娘さんだって知らずに、ホテルでトラブルに巻き込まれた彼女を助けて、ついでに説教したって話だ。」
「ふふっ、松田君らしいわよね。」
「……………けっこん」
常務の、春香さんの声が頭には入ってこない
「視察の後は、何度も彼女が松田のロスの部屋に出入りして、通っているって父親の田沼社長が言ってて、
英語も話せなかった娘が凄い進歩だって自慢してたよ。」
「松田君、結婚したらBest Companyの次期社長に転職したりして」
そう言って食後のデザートを持ってきた。
「婚約指環が誕生石ってのもあいつらし…………」
「あのっ…………!」
嫌だ…………そんな話、聞きたくない