その瞳をわたしに向けて
俯いたまま、思わず声を上げると、
ピタリと話をやめた春香と常務が美月を二人同時に見た。
「あ…………いやっ、まっ松田さんも、もう32歳ですもんね」
ダメだ…………涙でそう
「だよなぁ、仕事ばかりな奴だと思ってが、やっとだよな」
「……………っ」
「美月ちゃん?どうしたの、具合悪い?何か顔色悪いけど」
春香が明らかに様子が変わったら美月の顔色を覗き込む
「いえ、ははっ………なんか2課の話聞いたら懐かしくって」
不自然に髪を触りながら、なんとか顔を上げて笑顔を作る美月
…………ダメじゃん
なにやってんのよ本当に…………
「…………帰ります」
「えっ?」
「あ……………あの、明日やっばり朝イチで仕事入ってたの思い出して、もうそろそろ帰ります。」
美月がバタバタと帰り仕度をして立ち上がった
これ以上、剛平の結婚話なんて聞いて要られない
「美月ちゃん?」
「また、今度時間があるときお邪魔しますね。すみません、ご馳走さまでした。」
二人に深く一礼して、玄関へ向かった。
「美月ちゃん明日、お休みだって言ってたのに……」
そんな春香の声さえ聞こえない