その瞳をわたしに向けて
松田の結婚?
「May l help you ?」(どうしたのですか?)
彼女に声をかけたのは、正直見ていられなかったから…………
英語が喋れずトラブルに対処出来ないでオロオロしているのが丸わかりだ
わりと日本人が多く利用するホテルのロビーでブランドバッグを手に品のいいスーツを着ているが歳は幾分幼く見える。
まぁ、海外からみれば日本人は二十歳過ぎていても十代に見えるから、たぶん24、5くらいか?
「あ……………いえ、どうしよう」
英語で話しかけても、やっぱりあたふたするばかり
「あっアイキャンのっと………すっすピーク…………」
松田は見かねて溜め息をつく
「では、日本語なら大丈夫ですか?どうしたんですか?」
彼女の泣きそうに歪んでいた顔が一気に明るくなった
「あのっ日本人ですか?!ああっ、よかったぁ………」
聞けばこのホテルに泊まっていて、部屋のカードキーをなくしたのか見当たらないらしい。
「…………それでは、私が代わりにフロントに言ってあげるので、身分のわかるパスポートと、いくらかかかるかもしれないので財布を御預かりします。」
松田がそう言うと彼女は「ありがとうございます。」とあっさりパスポートと長財布を差し出した。