その瞳をわたしに向けて
「……………あんた、バカか?」
それを受け取った松田が呆れた様に低い声を出した
「えっ………?」
「普通、日本だって他人に財布を預けたりしねぇだろ、まして海外でパスポートって……………鴨がネギ背負って鍋の中入ってる状態だろ。」
「は…………?」
ポカンとする目の前の彼女に盛大な溜め息をつく
「もし、俺がスーツ着て日本語話せるただの詐欺師だったらどうする?
あんた、もう財布もパスポートも取られてる状態でトンズラされてるぞ」
「えっえっ?!」
やっと意味が分かったのか、急いで松田からそれを奪い取った
「あっあなた、悪い人なんですか?!」
急に警戒するようにジリジリと後ろへさがっていく
「普通のビジネスマンだよ、仕事でここにきた。ちなみに正真正銘日本人だ。どう見たって英語が喋れない情けない日本人を見つけて見るに見兼ねて声かけただけだ。」
「……………」
「ここは確かに日本人がよく使うホテルだが、だからこそ身なりの整ったスリや詐欺師がいるから気を付けるんだなっ。」
そう言って、立ち去ろうとしたら彼女に腕を掴まれた。
「あのっ、どうしたらいいですか?!カードキー…………」