その瞳をわたしに向けて

子供をあやすのは、甥っ子で結構得意な方だが、さすがに他人の子供は無理だよな

そう思いながら顔を叛ける智也君の頭を撫でる

「美月ちゃんも、初めはなつかなかったのよ」


「えっ?」

思わず春香の顔を見ると

「3か月前くらいに遊びに来たのよ、智也を見に…………また一人暮らしをこっちで始めたからって」


「あいつ、こっちに戻ってるのか?!」

身を乗り出して聞いた松田に常務が目を細めた



「やっぱりお前も、清宮さんの事はきになるんだな。最近一条に聞いたんだ、松田と清宮さんが昔付き合ってたって」


「…………」


「一回聞いた事あるよなぁ、どうなのかって…………あの時本当はどうだったんだ?」

神妙な顔をしてそう言ってくる常務に、今度ははっきりと答えた。


「付き合ってました。あの時はハッキリさせない方がいいと思って否定しましたが、今も別れたつもりはありません」
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