その瞳をわたしに向けて
でも、口を開いたのは松田の方だった


「お前さぁ………さっき杉村常務と何話してたんだ?」

視線は窓の外を見たまま、静かにそう聞いて来た


「へっ?」

突然話掛けられて、間の抜けた返事になってしまった。

「…………」

「いや………別にただ世間話してただけですけど」

松田さんに話せる内容じゃないけどね………

「ふぅん」
 
飲み会の時は立花さんしか気にしてないと思ってたのに、杉村常務と話してた事しってたんだ……

そんな松田を見ると、ずいぶん眠そうに見えた

「………酔ってます?だいぶ飲んだんですか?」

「いや、そんなに」

首をコキコキ鳴らすように動かし背中を伸ばす松田

くびの後ろを押さえながらこっちを向いてそのまま視線が留まった。

「………でっ?」


「はっ?」


「世間話って?」


「はぁっ?」


なに?まだその話続いてた?

いやいや………話せないでしょ、いくらなんでも……

「…………」

困って黙って俯いたままの美月の顔を松田は少し身体を屈めて覗き込んできた

「なっなんですか?!大した話してませんよっ………私が仕事に慣れたか、とか会社に入った理由とか………」



「お前ってさぁ、杉村常務の事好きなのか?」


「っ?!」
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