その瞳をわたしに向けて
こっちを遮って聞いてきた

「………」

思わず窓に顔を向けた。
松田の視線はまだこちらにあるのが分かる



「杉村常務と立花ってな、一緒に住んでるんだ…………もう」


「えっ……」

思わず顔を上げる

「一緒に暮らしてて、付き合ってもう三年になる。だったらあきらめつくだろお前普通………」


「………」

私があきらめる?
何が言いたいんだ、この人………?


「………だったら、松田さんはあきらめついてるんですか?」

松田の肩がピクッと動く

「何がだよ」

「違いました?立花さんの事、好きですよねぇ。」


「……………」


黙ったな……自分が先に話振ってきたくせに


そのまま二人の沈黙が続いた。お互いに窓の外を眺めたまま…………




「すみません、運転手さん。あそこのコンビニの前で停めてください。」

美月がタクシーを降りる場所を伝える


「ちょっと待て、お前駅近くって言ってなかったか?まだ先だろ」

松田が不信そうに美月に聞いた

「コンビニで買い物して帰りますから」


「………家、そこから近くなのか?」


「………?コンビニからですか?歩いて20分くらいですけど」


タクシーがコンビニの前で停まったが、松田が美月の腕を掴んできた


「お前っ、20分って………もう11時過ぎだぞ」

美月は顔を歪める


「ははっ……この前車から降ろした人がよくいいますねぇ………お疲れ様でした」

そう言って、美月は松田から腕を振りほどいてタクシーを降りた


タクシーを背に、コンビニへ向かうとバタンッと車のドアの閉まる音がして、後ろに人の気配ん感じた


「はぁっ?!何やってるんですか?!」

「コンビニ寄るんだろ、付き合う。ついでに家まで送ってく」


タクシーを降りてきた松田が、そう言って美月の横に並んでコンビニへ向かう
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