その瞳をわたしに向けて

その日、婚約者としてパーティーに二人で出席していたが、気が付くと清宮保の姿が見当たらない

「あれ? 本当に捨ててかれた?」

まさかと思い、捜すとパーティー会場の隅で項垂れていた。

「えっ?! どうしたの?!」

仕方無くパーティーを抜けて、目の据わったその酔っ払いを彼のプライベートルームのために使う部屋に送った。

…………これって美月と一緒じゃない?

凭れ掛かりはするが、足取りはちゃんとしている
それよりいつもの刺々しい目と違って、まさかの美月に向けるような、優しい瞳でみつめられた

「ちょっ、ちょっと………あの」

ベッドに寝かせるつもりが、逆に組み敷かれた

「瑠璃子…………お前、俺のこと実は好きなんだろ。」

酔って潤んだ優しいその瞳が、綺麗な顔と共に降りてきて、唇が重なる

指が………頬から耳朶を弄びながら、長く熱い口付けが続く

そうなのかもしれない、美月を溺愛しながらも決して甘やかさない

厳しくて、口も悪いが間違ったり逃げるようなことはしない、真っ直ぐな性格は尊敬している

なによりやっぱりこの綺麗な男を嫌いになれるはずがない
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