その瞳をわたしに向けて

「あっ………いてっ……いてててっ」


美月の肩から長いスーツの腕が伸びて、若者の腕を掴み上げた

美月の腕が解放されたと同時に、コンビニ袋を持ったもう一方の腕で、スーツの中に抱き留められた

………わっ

頭の上から不機嫌な低音の声が響く


「何か用か?」


顔を見なくても分かる、美月の肩を抱き寄せ190㎝の長身で威嚇する冷たい眼鏡の視線
は、若者たちを一瞬にしてビビらしている


「なっなんだよ………っ男連れだったらそう言えよっ」

すぐに引っ込んで行った若者は、案外見た目だけだったのか、それとも松田の威嚇が半端なかったのか………


松田は、美月をコンビニ側から自分の反対に肩を押してその場を通り過ぎた

暫く肩を抱かれたまま並んで歩いていると松田が斜め上から見下ろしてきた


「どうしようもない奴らに絡まれんな、面倒くせぇ………」


その言葉にカチンときて、美月は松田の腕を思いっきり剥がし、睨み付けた。


「松田さんが遅いからでしょっ!」

いつもだったらさっさと通り過ぎてたのに………

「だいたい、何買ってたんですか?」

それほど沢山コンビニ袋に入って無さそうなんだけど………

「アイス」

今は5月末、だんだん湿気が帯びてきて、夏ほどではないかぼちぼち蒸し暑くなってきている。

一歩前を歩いていた美月が松田の方を見直すと、袋からそれを取り出していた


「スーツきて歩きながら物食べないで下さいよ……恥ずかしく無いんですか?」


「………誰も見てないだろ、立花みたいな事言うんだな。」

「…………」

アイスを食べながら、美月の歩幅に合わせて歩く松田を見上げた


「松田さんって、立花さんのどこが好きなんですか?」

この際、藪から棒に聞いてみた

「………」

無表情でこっちを見る松田に少し怯んで一歩前に進んだ

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