その瞳をわたしに向けて
「…………」
「…………」
「あの…………で、一つ聞きたいんですが」
二人の言い争いが治まった処で美月が口を開いた
「この結婚に、私のメリットは何でしょう………」
「えっ」と二人同時に美月を見直した
自分を落ち着かせるために、一口紅茶を飲んだ
一度小さく深呼吸した後、ゆっくり視線を杉村常務へ移した
「だって、政略結婚なんですよね。常務がおっしゃったじゃないですか。」
「………ああ」
続いて夫人の方へ向き直して
「泉のおじ様の会社や父にも、そして杉村常務も仕事には大変影響が御有りみたいで結構なのですが………私には何かあるんでしょうか?」
「………それは、年頃のお嬢さんは幸せな結婚をする事でしょ?」
なるほど……
「では、私は杉村常務と結婚して幸せになれるのでしょうか?」
「「えっ」」
うまく二人声が揃った
「それは、もちろん………」
「清宮さんの幸せとは、どんな事ですか?」
夫人の言葉にかぶせて杉村常務が美月に聞いてきた
「もちろん、100%の愛情です。生涯私だけを愛してくれる事です。」
「では、保証はできません。なにせ政略結婚ですから」
「ちょっと!貴也さんっ」
夫人が立ち上がって、杉村常務を叱責するのに、静かに美月は頭を下げた
「それでは申し訳ありません。このお話は無かったことにしていただきたいのですが……」
「…………」
「伯母さん、これは僕が断られたと言うことですよね」
「だけど、美月さんの御父様がなんていうか………」
美月に向き直して眉間に皺をよせる
「私は、父の人形ではありません、自分の事は自分で決めます。」