その瞳をわたしに向けて
「おば様、私の事少し理解できてないみたいでしたけど………」
結局、その後20分ほど話し合って縁談騒動はとりあえず終結した。
北川さんがもう会議の時間ですから………とせかして夫人には帰ってもらった。
「いえいえ、問題ありません。とても堂々としていてビックリしました。」
そう言って、北川さんが紅茶のセットの片付けを始めた。
私が……と、言ったけどここは北川がやるからいいよと言われ、その杉村常務は気の抜けた様にソファーに深く凭れていた。
「………お見合いもした事ないのに、いきなり断ることになるなんて、思いませんでしたよほんとに………」
結局私が断るように仕向けられた様なもんなんだけど………
「ああ……清宮さんには色々申し訳なかったね。」
そう言って向けられた柔らかい笑顔はいつもと同じ………
今、通常運転に戻った訳だ…………
「私はここまでですよ。おば様達相手にこれから大変なのは立花さんなんじゃないですか?」
立ち上がったまま、杉村常務を見下ろして息を吐きながらそう言ってみたのに
「……そうたね。でも、大丈夫だよ。」
そのいつもの優しい笑顔は、何も問題なさそうだった
「……………」
用事はすんだのだから、一礼してそのまま常務室を退室しようとしたとき、もう一度呼び止められた
「清宮さん、悪いけど定時後、立花さんにここへ来て欲しいと伝えておいてもらえますか……」
「………打ち合わせですか?」
嫌味の一つも言いたい気分だったけど、でもたぶんこの人にはかなわない……
ただ、いつもと同じ笑顔を返されるだけ……
「そう、頼むね。」
なんだかスッキリしない、複雑な気分