その瞳をわたしに向けて
閉じた瞼に長い睫毛、それに少し掛かったダークブラウンの前髪………

杉村常務が眠っているそのソファーの横で膝をつき、顔を覗き込んだ

そっと、その前髪に触れてみて、胸がキュンとなった。


………きっと、立花さんの前ではこんな風に無防備なんだろうなぁ……

美月から香る立花の香水の匂いが、微かに感じたのか、杉村常務の瞼が一瞬震えた


「……るか………」

閉じたままの瞳を擦り、その起ききれない杉村常務に美月の心臓が、跳ね上がった。

まだ、深い眠りからなかなか抜け出せない様子だった。


つい……ちょっとしたイタズラ心だった………


杉村常務の耳元までゆっくり唇をもっていって、囁いてみた。

「貴也さん、風邪引きますよ、こんな……」


言い終わる前に杉村常務の長い指の手が、美月の頭の後ろに回り、強く引き寄せられた

「えっ……………」

唇が触れる寸前に常務の口が動く


「はるか……」

「っ!!!」


力強く優しい常務の唇に捕らえられて、もう一方の常務の腕が腰に回りさらに身体が密着する。

「………んっ」


唇を舐めるような甘いキスに、思わず抵抗を忘れ、そのまま頭の中までとろけるように熱く意識が遠くなった。













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