その瞳をわたしに向けて
「はぁ………」

どのくらいそうしていただろう…………

帰る気にもなれず、かといって私服に着替えた後だから自分の席にいるのもおかしいし………休憩コーナーにいれば帰らないのかと声をかけられる

部署内にある資料室の中のソファーに座ったままボゥーっとしていた


あの後、どうしただろう…………

立花さんも杉村常務も怒ってるだろうなぁ………


「はぁ…………」





 カチャッ


「……お前、何やってんだ、こんなところで…………?」


声を掛けられた方を見ると、松田が不思議そうに聞いてきた。

「残業か?デスクにもう誰もいないぞ。電気ついてたから立花かと思った。」

「えっ、立花さんは………?」

顔を上げて美月が聞いた

「はぁっ?さぁ…………帰ったんじゃないのか、いなかったが。」


美月は顔を下に伏せて、聞き取れない程の小声で杉村常務は……と聞いてみた


「何?」

よく聞き取れなくて下を向く美月に近づく松田

「いえっ、何でもないです。………もぅ帰りますから」


そう言って、真っ赤な顔して立ち上がって目も合わせずにお疲れ様でしたと、横を通り過ぎようとした

ガツッと美月の腕を掴む松田


「何かあったのか?」

眉をひそめて美月の顔を覗き込む

「……………」


「杉村常務なら、さっき取引先との会食のために帰ったぞ。」

松田の言葉に、えっ……と顔を上げる


「清宮?」

「…………」



「飯、いくぞ………まだだろ」

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