その瞳をわたしに向けて
時間は、19時半を過ぎていた。
腕を掴まれほとんど捕獲されたように連れていかれ、車に乗った。
状況が理解できず固まったままおとなしく乗っていた美月
暫く走っていた車は、美月のマンションの近くのパーキングに停められた。
「…………えっ、ここで?」
「ああ、この間あの時間でもやってる居酒屋見つけた。お前のマンション近くだし、帰り楽だろ。すぐそこだから」
そう言って車を停めたパーキングから、駅に向かって少し狭い路地に入って行くと、こじんまりとした洋風居酒屋があった。
分かりにくい所にあるわりには流行っているみたいだった。
明るい雰囲気で普通の居酒屋メニューに加えて創作洋風料理も売りのアットホームで若者向けの居酒屋だった
取り合えずお腹の足しになる物をいくつか頼んで、お酒はライム酎ハイとジントニックを注文した。
小さなテーブルに背の高い松田には少し狭そうだった。
「酒、飲めないんじゃなかったか?清宮って」
ライム酎ハイをちびちびと口につける美月を見て、不思議そうにそう言ってきた
「…………別に、弱いだけです。二十歳越えてますから、飲めますよ」
「ふうん………結構有名だぞ、清宮は誰に注がれても絶対酒は飲まないって」
「………面倒臭いだけです。顔が赤くなるし、そうなるとなんか話しかけてくるし、飲まない方が煩わしくないんです周りが………」
「なるほどな、お前らしいな」
「松田さんこそ車どうするんですか?飲んでますけど」
ジントニックをまるで食事と出された麦茶の様に飲む松田
「駅もあるし、この前みたいにこの辺でタクシーも拾えるから大丈夫だろ、明日は遅くなっても俺の場合出先に寄ればいいんだから」
「ふうん……そうですか」