その瞳をわたしに向けて
その後は黙々と飲んで食べた。なのに全然満足感が感じない……

「清宮?」

ただひたすら黙ったままの美月の顔を覗き込む

「………どうせ、会社なんか私のいる意味なんかないんだから…………」

腹が立って、我慢して、誤魔化して………訳が分からず涙か出てきた


「…………っ」


はぁっ………と小さく松田が溜め息をつく


「なんだよ、お前は…………」



「………ごめんなさい」

溢れだしたそれはなかなか止まらなくて、暫くぐずぐずと顔を伏せた。

「……………」

美月が落ち着くまでは取り合えず黙っていた松田

「今日、やっぱり何かあったのか?」

少し落ち着いて、松田が頼んでくれた二杯目のライム酎ハイを口につける

「…………」

「今日、杉村常務の所に社長夫人が来てただろ……」

コクンと小さく頭を下げる

「お前、知り合いか?」

「…………どうしてそう思うんですか?」

酎ハイに視線を向けたままくぐもった声を出した。


「だって、清宮って……清宮コンツェルの社長の娘だろ?」


「………………なんで知ってるんですか?」


「部長連中は知ってるだろ、俺は山崎主任に聞いてたが、本社内じゃ取引先でもあるからなぁ。」

目の前にある酎ハイにゴクリと喉を鳴らしながら飲んで、はぁっ……と息をついた


「別に、隠したかった訳じゃないけどさぁ、知ってるなら言ってくれたっていいじゃない!なによっ!みんなしてこそこそと………人の事バカにしてぇ………」


「清宮、ちょっとお前声………」

「意味ってなによ、意味って……私は会社の道具かって、わざわざ振られるために会社に入ったって笑えるっつうの…………ほんとバカにすんなぁーー」

「清宮っ」

取り合えず松田が口を押さえ分かったからと宥めた

「…………ううっ」

今度はまたぼろぼろと泣き出した。



「酒乱かよ、そんなに飲んでないだろ……」

松田は呆れて溜め息をついた

「私だって………嫌われたくなんかないのにぃ~みんな立花さんばっかりぃずるいよぉ」

「分かったから、全部話せ、聞いてやるから声落とせ、普通に喋れ。」


ひくひくと声をしゃくりながら、飲み会の時杉村常務から縁談の話を聞いた所から、社長夫人の事、今日の夕方立花にキスを見られた事まで松田に話した。


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