その瞳をわたしに向けて


しかし今日は………
折角そうやってテンション上げても


やっぱり業務予定は、定時を過ぎても終わらない

正直パソコン操作事態、得意ではない………


立花さんは、やっておいてくれるとは言ったものの、さすがに帰り辛い

ウダウダと切りのつく所を探しながら作業を終わらせた。
煩い松田がいない事を確かめ、立花に「すみません」っと目配せして、そっと席を離れた


ロッカーで着替えを済ませ、
常務室近くにある本来来客用女子トイレの他より広いパウダールームで化粧を直し、
装飾品をつけ、いつもより高いヒールに履き替える。


「よしっ」


気合いを入れてトイレから出ると、まさかの松田と鉢合わせ


「あっ………」


「…………」


「おっお疲れ様です……」


すっかり帰社モードの出で立ちでバツが悪そうに挨拶をする


当然睨まれているのは解るから、一瞬見合った目を、逸らしたまま合わせられない

兎に角この場をさっさと通り過ぎてしまえば、と思い早足になる


「いい身分だな、全く………」


低い声が頭の上から嫌みを込めて堕ちてくる

その一言に思わず足が止まる


「立花さんが、用事があるなら帰ってもいいって言ってくれました……」

「用事って、どう見たってその格好……合コンか何かだろ?」


まあ………確かにそう見えるよね。しかしここはそのまま何も答えずに通り過ぎよう


そう思い止めた足を、再び動かし腰を低くしたまま失礼します……っとエレベーターへと向かった


すれ違う瞬間、殺人的な舌打ちが堕ちてきた

「…………ううっ」

入社した時から彼は、好意的な感じが全くない


やる事なす事全て注意される為に、とにかくこの男は苦手だ


あの黒ぶち眼鏡の下にある、何もかも凍らしてしまう様な冷たい目が嫌い


何と言うか……あのはるか上にあるいつも不機嫌な顔が怖い
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