その瞳をわたしに向けて
ライターを借りた後、そそくさと喫煙所から退散していった二人組をそれとなく見送った
「はぁ…………」
お持ち帰りされたのは俺の方だっちゅうに
酒乱のあげく、記憶消失タイプとはねぇ………
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「お前、酒は大丈夫って言ってたよなぁ」
昨日、居酒屋で酎ハイを飲んでいたまでしか記憶がないと言う目の前の女に呆れて物が言えない…………
「言ってたまではよかったんですけど、出来ればほっといてくれればよかったんですよ………」
そう言って美月は口を尖らした
「ほっとけるかっ、泣くわ騒ぐわ、連れてかれそうになるわ、転んでまた泣き叫ぶし、あげくに怪我の手当てまでさせられて………」
俺の言いように、ますます俯いて身を小さく屈める
「ううっ………すみません、でも…………」
溜め息をつきながらローテーブルに肘をかけ、彼女から出されたコーヒーをすする
「何?」
「でもじゃあ、それでなんで泊まってるんですかぁ? その後でも十分帰れたんじゃないんですか………?」
「……………」
お前が誘ってきたんだろって、記憶がないこいつが信じるか? 昨日と全く違う雰囲気で
「…………いや、それはお前が………」
松田が状況を説明する前に、美月が俯いたまま、意を決したようにいい放たれた言葉が
「キスマークついてるんですけど……これって完全にセクハラですよね?!」
首元についた赤い斑点をチラリと見せて指し示す
はぁっ?!……………こいつ開き直りやがった
俺が無理ヤリ襲ったとでもいいたいのか?!
「言っとくけどなぁ、してないからなっ」
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